Book
 
2013.10.08

ジェイムズ ・ヒューストン著、小林 正佳翻訳『北極で暮らした日々―イヌイット美術を世界に紹介した男の回想』

「イヌイット美術を世界に紹介した」とずいぶんと仰々しいサブタイトルがつけられているが、本書を開くとそれが大げさでないことがよくわかる。

1940年代末からカナダ北極圏に住んだ氏は石製彫刻品の制作をイヌイットたちに勧める。そして、イヌイット美術に魅せられて、それを世界に伝える「つなぎ役」を果たす。イヌイットたちの作品は芸術となり世界に流通する。北極初のアートは彼なしでは成し得なかったと同時に、イヌイットにとって大きな収入源となる。

版画作品も世界的に有名だが、氏を介しての日本とのつながりも興味深い。1958年末に来日し、版画家の平塚運一氏に師事し、3か月間技術を学んだ。そして、それをイヌイットに伝えたのである。カナダ大使館高円宮記念ギャラリーで「旅する版画:イヌイットの版画のはじまりと日本」と題した展示会が2011年に開催されたが、そういった視点でイヌイットの版画作品を見てもおもしろい。

本書のおもな舞台となるケープ・ドーセットはカナダ北極圏でもアートの村として有名だ。映画で有名なのはイグルーリック。どちらの村も行ったことがないので、いつかは訪れてみたい。

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