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2015.03.26

近野不二男著『北極海に消えた気球―極点挑戦・悲劇の物語』

私の好きな探検家のひとりに、スウェーデン人のサロモン・アウグスト・アンドレーがいる。1897年、船や犬ぞりなどでの、氷上を辿っての北極点到達がいまだ果たせなかった当時、気球で北極点まで飛んでいこうという大胆な計画を実行した人物だ。

「風まかせにしか飛ぶことができない」という気球の最大の欠点を解決するために、機械技師でもあったアンドレーはひとつの発明をする。それは、気球から氷上に垂らした長く重い綱(誘導索)を引きずることで飛行速度を風よりも遅くし、帆によって気球の進行方向を操るというものだった。

アンドレーほか二人を乗せた気球「ワシ号」は、スバールバル諸島から北極点を目指して飛び立ったのち、消息を絶ってしまう。それから33年後、人の訪れることも稀な小さな無人島で、捕鯨船の乗組員たちがアンドレー一行の白骨遺体とキャンプの跡を発見する……。

そこから発見されたアンドレーの日誌や、撮影済みの写真から、一行がたどった過酷な旅の経過と顛末が紐解かれる。

北極点への空路からの到達は、1926年にアメリカのリチャード・バードが航空機で極点上空を通過し、1937年にロシアのイワン・パパーニン隊が極点近くに航空機で着陸した。

アンドレーの存在と発想には、時代がまだ追いついてなかったのかもしれない。