Book
 
2016.04.12

小澤実、中丸禎子、高橋美野梨(編著)『アイスランド・グリーンランド・北極を知るための65章』

明石書店エリアスタディーズ・シリーズの140巻目として刊行された一書。北大西洋に広がる世界を、まとまりある歴史空間として描いている。当該域についての、日本語による初めてのアンソロジーである。本シリーズの多くは、『デンマークを知るための~』『スウェーデンを知るための~』といった具合に、一国単位で記述されることが多いのに対して、本書は、独立国家(アイスランド)、デンマーク自治領(グリーンランド)、北極域を一書にまとめ、その地理的・気候的・歴史的共通性を意識することで、北大西洋世界を包括的に理解しようと試みている。人文・社会科学系の研究者だけでなく、自然科学系の研究者、冒険家、現地生活者、牧師、漫画家など、さまざまな分野の執筆者が筆を執っていることも、本書の特徴の一つである。

日本の北極域研究(Arctic Studies)は、2015年に大きな転換点を迎えた。4月には、日本学術会議主導のもと、北極域研究で最も権威のある国際会議の一つ「北極科学サミット週間」が国内で初めて開催され、9月には、国立極地研究所・海洋研究開発機構・北海道大学を中心機関として、文理融合のナショナルフラッグシッププロジェクト=北極域研究推進プロジェクト(ArCS: Arctic Challenge for Sustainability)が始動した。10月には、ArCSとの連動を前提とした日本初の北極政策が策定され、日本の北極域への関心を内外に示すこととなった。これらに共通するのは、人文・社会科学と自然科学との協働である。これまでの北極研究プロジェクトが、自然科学者を中心に展開されていたことを考えれば、人文・社会科学者を含むオールジャパン体制でプロジェクトが始動したことは、研究史上画期をなす出来事であったといえる。

本書は、一般書としての体裁を持ちつつも、高度な専門性を背景に、人文・社会科学、自然科学を含む幅広いテーマを積極的に取り入れている。ArCSの実施担当者も執筆に参加しており、今後の文理連携に向けたプラットフォームとして機能していくことが期待されている。