Book
 
2013.10.08

鈴木直樹 著『北極にマンモスを追う―先端科学でよみがえる古代の巨獣―』

なんとも夢にあふれた本である。氏は考古学者ではない。東京慈恵会医科大学教授で、同大学高次元医用画像工学研究所所長。医学博士、工学博士、理学博士と横断的な専門分野を持ち、その多様な専門分野による知見と、かつ、「マンモス」に対する並々ならぬ情熱が本書にはぎっしりとつまっている。

本書を読んでいると、氷雪を踏みしめ、鼻息を荒らし、獣臭を漂わせる巨獣が振り返るといるような錯覚に陥る。北極シベリアの永久凍土の地へ、「ユカギルマンモス」の発掘に向かうのだが、その邂逅から感動、喜び、愛情と体中からのなんともいえない、「マンモス」への惚れこみようが文章から伝わってくる。その後、この「ユカギルマンモス」の標本が日本に輸送され、「愛・地球博」でお披露目されたのはご存知のとおりだ。

1904年に設立された探検家、冒険家、科学的探検を実施する研究者たちの組織であるエクスプローラーズクラブの、数少ない日本人正会員である氏は言い切る。「科学は冒険そのものだ」と。氏の時空を越えた探検・冒険が終わることはないのだろう。

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