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2021.09.21

狩りの思考法

狩りの思考法

角幡唯介 著

アサヒ・エコ・ブックス No.40
アサヒグループホールディングス 発行/清水弘文堂書房 編集発売

現実は、とても残酷だ。でも
現実は、とっても美しい。

現実世界にたいして私が如何なる認識をもってこれと接しているのかといえば、それはカオス、渾沌である、ということである。
真の現実―自然といってもいいかもしれない―とは収拾のつかない無秩序な修羅場である。
――「計画と漂泊」

漂泊とは流れさすらうこと。目的地を決めるのではなく、今目の前に生じる事象や出来事、あるいはそこに姿をあらわした他者、動物など生ける主体に巻きこまれ、その関わりのなかから新しい未来が生じる、そうした時間の流れに身を置くことである。
――「計画と漂泊」

最後の部分では神がサイコロをふる。その意味で狩猟というのは偶然の産物であり、不確実で先の読めないカオス的な真の現実に触れる行動様式である。
――「計画と漂泊」

獲物がとれれば旅が延長され、そのぶん生きることが許される。狩りとはその意味で本源的に生が躍動する瞬間だ。〈中略〉今現在に組みこまれることで未来がどんどん更新されていくこの存在様態は、まさしく漂泊そのものというほかなく、狩猟者とは根源的に今現在を生きる漂泊者たらざるをえないのである。
――「計画と漂泊」

事前の〈計画〉を優先して目の前の現実を切り捨ててしまうことは、イヌイット的にはじつに恥ずべき愚挙なのである。
――「モラルとしてのナルホイヤ」

未来を見つめて、いまを直視できない私たちへ。

狩りの思考法
角幡唯介
アサヒグループホールディングス/清水弘文堂書房
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